40代男性・離婚後の立ち直り方|”新しい自分”にならなくていい理由

離婚してから、時間の流れ方が変わってしまったように感じていないでしょうか。仕事は普段通りにこなせても、家に帰ると急に静かになる。元妻や子どものことをふと考えてしまう。「早く元気にならなければ」と思う一方で、その気力が湧かない——。40代で離婚を経験した男性には、そんな時期があります。

この記事は、「早く前を向きましょう」とは言いません。まずは、「立ち直る」とは実際にはどういうことなのかを一緒に整理し、感情・生活・人間関係を分けて、今日から整えられることを見ていきます。

※記事のアイキャッチ、及び記事内の人物イラストは、内容をもとにしたイメージ画像です。実在の人物ではありません。

離婚から「立ち直りたい」と感じたら、まず知ってほしいこと

先に結論をお伝えします。「立ち直る」とは、元の自分に戻ることでも、まったく新しい自分に生まれ変わることではありません。感情・生活・人間関係を分けて、一つずつ整えていく過程です。そしてその中でも、感情の整理より先に、生活リズムと仕事を安定させることが、遠回りに見えて最も効果的な出発点です。

離婚した直後は、正直、何も手につきませんでした。友人からは『ジムにでも行けよ』『マチアプに登録しろ』と言われましたが、当時の自分にとっては、それらのすべてが重荷でした。半年ほど経って、ようやく普通に眠れるようになってから、少しずつ物事を考えられるようになった気がします。

※「ひとりのレッスン」編集部に寄せられた声をもとにした内容です。掲載にあたっては、ご本人の許可をいただいています。

「立ち直る」は、ゴールではなく順番の問題

「元妻を完全に忘れる」「早く元気になる」——そうした状態を目指そうとすると、かえって苦しくなることがあります。感情の整理には、自分でコントロールできない時間がかかるからです。一方で、睡眠、食事、仕事のリズムといった生活面は、感情の整理を待たずに、今日から手をつけることができます。感情より先に生活を整えた人の方が、結果的に安定するのが早い傾向がある、という指摘も複数見られました。

離婚する前は、自分がベルトコンベアで運ばれていく荷物のように感じていたところがあります。離婚してから、食事の時間も睡眠も滅茶苦茶になって、「これではいけない」と感じました。それで、「1日のやることリスト」を作って、タスクをこなすたびにチェックを入れるようになった。「自分の人生を動かしているのは自分なんだ」という感覚を取り戻すような作業でした。

※「ひとりのレッスン」編集部に寄せられた声をもとにした内容です。掲載にあたっては、ご本人の許可をいただいています。

離婚を経験した40代男性は、実は多い

厚生労働省の統計によれば、2020年(令和2年)に離婚した夫を年齢階級別(届出時年齢)にみると、35〜39歳が29,265件でもっとも多く、僅差で40〜44歳が28,458件、45〜49歳が27,415件と続いています。30代(30〜34歳・35〜39歳の合計56,084件)と40代(40〜44歳・45〜49歳の合計55,873件)は、ほぼ拮抗した水準にあります。つまり、40代で離婚を経験する男性は、特別に少数派というわけではなく、30代と並んでもっとも多い層の一つです。

出典:厚生労働省「令和4年度 離婚に関する統計の概況」(人口動態統計特殊報告)

そもそも「立ち直る」とは、何を指すのか

「立ち直る」という言葉の中には、実は複数の異なる段階が含まれています。ここでは、その中身を分解してみます。

「元の自分に戻る」でも「生まれ変わる」でもない、第三の道

離婚後によく語られるのは、「早く元通りの生活に戻ろう」という考え方か、「新しい自分に生まれ変わろう」という考え方かのどちらかです。しかし、どちらも実際には難しく、無理に目指すとかえって苦しくなります。

ユング派の分析家であるジェームズ・ホリスは、著書『中年の通過儀礼』などの中で、離婚を、結婚生活の中で無意識に演じてきた役割(夫、大黒柱、判断を求められる人)から離れ、「自分は、これまでの来歴や役割を抜きにして、何者なのか」を問い直す機会の一つとして位置づけています。離婚そのものは喪失ですが、同時に、これまで気づかなかった「役の外側にいる自分」に出会い直すきっかけにもなり得る、という考え方です。

一方で、作家のオリバー・バークマンは、エッセイ「本当の意味での再出発は存在しない」の中で、完璧な再出発を目指すこと自体が幻想であり、必要なのは、今の自分のまま、失敗や不完全さを抱えたまま続けていくことだ、と論じています。

この二つを重ねると、一つの現実的な見方が浮かび上がります。離婚は人生の失敗の証明ではなく、結婚という関係の中で見えなくなっていた自分に出会い直す機会でもある。ただし、それは新しい自分に生まれ変わることとは違う。生まれ変わる必要はなく、ただ、その「役」を降りるだけなのだ——というのが、この記事で軸にしたい考え方です。

出典:Oliver Burkeman, “There’s no such thing as a fresh start”

立ち直りには段階がある

生活リズムを取り戻す、感情を整理する、一人の時間に慣れる、子どもとの関係を作り直す、自分への自信を取り戻す——「立ち直り」には、こうした複数の段階があります。順番はこの通りでなくても構いませんし、同時に進まなくても構いません。すべてを一度に達成しようとせず、今の自分がどの段階にいるかを、ときどき確認するくらいで十分です。

元の妻が新しい相手と幸せそうにしているのを見て、自分だけ取り残されたような気持ちになったことがあります。でも、誰かと比べて焦って動いても、結局うまくいかないと後から気づきました。

※「ひとりのレッスン」編集部に寄せられた声をもとにした内容です。掲載にあたっては、ご本人の許可をいただいています。

なぜ離婚後、40代男性はこんなに消耗しやすいのか

「なぜこんなにつらいのか」——それは、あなたの弱さのせいではなく、この年代・性別に起こりやすい構造が関係しています。

「夫」「大黒柱」という役割が、急になくなる

結婚生活の中では、意識しないうちに「夫」「稼ぎ手」「家庭の意思決定者」といった役割を担っていることが多くあります。離婚は、パートナーを失うと同時に、こうした役割そのものを急に失う経験でもあります。日常の些細な場面——誰かのために夕食を作る必要がなくなった、家のことを相談する相手がいなくなった——に、その喪失がふと顔を出すことがあります。

離婚直後の数か月は、正直、何も手につきませんでした。将来のことを考える余裕なんてなかった。あとになって振り返ると、あの期間は“何もできなくて当然”だったんだと思います。

※「ひとりのレッスン」編集部に寄せられた声をもとにした内容です。掲載にあたっては、ご本人の許可をいただいています。

男性は、助けを求めることにハードルを感じることがある

「弱音を吐きたくない、男らしくない」「人に頼るより、自分で何とかしたい」——そう考える男性は、現在も少なくありません。

日本の成人を対象にした研究では、援助を求めるスタイルに性差がみられ、女性に比べて男性の方が相対的に消極的だったことが報告されています。また、男性を対象にした別の研究でも、心理専門職に助けを求めることへの「劣等感」や「不安」といったセルフスティグマが、援助要請に関係していることが示されています。

男性は、離婚後につらいと感じても、「誰かに相談するほどではない」「こんなことで弱音を吐くのは情けない」と一人で抱え込んでしまうことがあります。

出典:「援助要請スタイル,シャイネス,心理的適応の関連と性差」『パーソナリティ研究』34巻1号

仕事という「逃げ場所」も、なくなることがある

仕事は、単にお金を稼ぐためのものではなく、忙しくしていることで考えずに済む「逃げ場所」になっていることがあります。目の前の仕事、人とのやり取り、毎日の予定に追われている間は、家に帰った後の寂しさや、これからの人生について考えずに済むからです。

ところが、離婚して一人の生活になった途端、その忙しさだけでは埋められない時間が増えてきます。これまで仕事に預けていた「自分の時間」や「自分自身」と、急に向き合うことになる。その変化も、離婚後の消耗を大きくする一因になるといえるでしょう。

感情と生活を分けて、まず生活から整える

「まず何をすればいいのか」——感情の整理を急がず、生活面の小さな安定から始めることをおすすめします。

感情が整理できていなくても、生活は整えられる

「気持ちが落ち着いてから、生活を立て直そう」と考えると、いつまでも動き出せないことがあります。順番を逆にしてみてください。睡眠時間を一定にする、決まった時間に食事をとる、仕事のリズムを崩さない——感情とは切り離して整えられる部分から、先に手をつけてみましょう。生活の土台が整うと、感情の波にも少しずつ振り回されにくくなります。

一人の時間に、無理に意味を持たせなくていい

「何か新しいことを始めなければ」と焦る必要はありません。新しい趣味やジャーナリングも役に立つことはありますが、今はまだ、静かな時間をそのまま過ごすだけでも十分です。一人の時間そのものは、悪いものではありません。無理に埋めようとせず、まずはその時間に慣れることを優先してください。

別居後、まず意識したことは「自分を自分で大切にする」ことでした。朝の身だしなみが3分だったものを10分に増やす・全身鏡の前に立って「今日はどのネクタイを着けていこうか」と考える時間を作る・マッサージクリームを塗って顔筋マッサージをするなど、「自分をいたわる」そんなことを意識しました。おかしいかもしれませんが、それらは「生活を動かす」うえで大切なことでした。

※「ひとりのレッスン」編集部に寄せられた声をもとにした内容です。掲載にあたっては、ご本人の許可をいただいています。

元妻・子ども・これからの恋愛について、今考えておきたいこと

ここから先は、状況によって大きく事情が異なる部分です。すべてが当てはまるわけではないという前提で、必要な範囲で読み進めてください。

元妻との関係は、白か黒かで決めなくていい

「完全に縁を切る」か「復縁を目指す」かの二択で考える必要はありません。子どものことで最低限の連絡を取り続ける関係もあれば、距離を置きながら少しずつ気持ちを整理していく関係もあります。今の自分にとって無理のない距離感を、焦らず探ってください。

子どもとの関係は、離婚後も続いていく

子どもがいる場合、離婚は夫婦関係の終わりであっても、親子関係の終わりとは限りません。日本の家族心理学の研究では、離婚後に子どもが父母との関係を良好に保てることは、子どもの適応の良さと関連していました。

ただし、子どもの年齢や気持ち、離婚に至った事情、親同士の関係などによって、適切な距離や関わり方は変わります。大切なのは、離婚前と同じ形に戻すことではなく、その時々の状況に合わせて親子関係を考え続けることです。

出典:小川洋子「子どもが面会交流を通じて別居親と新たな関係性を築くまでのプロセスに関する質的研究」『家族心理学研究』32巻1号「離婚後の父母コペアレンティングと子どもの心理的苦痛,適応等との関連」『教育心理学研究』70巻2号

恋愛や再婚は、急がなくてもいい

恋愛や再婚については、この記事では急いで扱うべきテーマとは位置づけていません。「新しい恋人を作れば楽になる」と考えて焦って行動し、後から後悔したという声も見られました。まずは一人でも安定して生活できる状態を作ることを優先し、恋愛や再婚は、その先の選択肢の一つとして考えていただければと思います。

それでもつらいときは、一人で抱えなくていい

ここまでお伝えしてきたのは、自然な範囲のつらさへの向き合い方です。ただし、それを超えるつらさが続いている場合は、話が別です。

「自然な範囲のつらさ」と「専門的なサポートが必要な状態」の目安

気分の落ち込みや不眠が長期間続いている、食欲に大きな変化がある、仕事や日常生活が維持できないほどつらい、あるいは自分を傷つけたい気持ちが浮かぶ——こうした状態がある場合は、自己判断せず、専門家や相談窓口に頼ってください。これは「気持ちが弱い」ということではなく、専門的なサポートが有効な可能性がある、というだけのことです。断定的な診断はここではできませんが、目安として知っておいていただきたい点です。

頼れる相談先を知っておく

誰かに話すこと自体にハードルを感じる方も多いと思います。いきなり心療内科や精神科を受診する以外にも、選択肢があります。

一人で抱え込まなくていい場所があります

離婚後のつらさが続いていて、一人では整理しきれないと感じたときには、誰かに話してみるという選択肢があります。もし「消えてしまいたい」「自分を傷つけたい」という気持ちが強くある場合は、下記の窓口にすぐにご連絡ください。

今の自分のまま、続けていけばいい

「立ち直る」は、一つのゴールではありません。生活・感情・人間関係を分けて、一つずつ整えていく過程です。元の自分に戻る必要も、まったく新しい自分に生まれ変わる必要もありません。結婚生活の中で担っていた役割を、少しずつ降りていくだけでいいのです。

大きな決断を急ぐ必要はありません。まずは生活のリズムを整えること。そして、今の自分のまま、続けていけばいいということ。それだけで、確かな一歩になります。もし一人で抱えるにはつらいと感じたときは、遠慮せず、頼れる場所を頼ってください。

(執筆・編集 | 「ひとりのレッスン」編集部)

※お送りいただいたメッセージは、編集部にて大切に拝見いたします。

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ひとりのレッスン編集部

「ひとり」は弱さではない。 けれど、弱さでもいい。 人生の午後を歩む、40代・50代のあなたへ。

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